《十月十三日》背表紙のわずかに凹む金文字の全集にまぶし谷崎潤一郎

本が売れないと言われて久しい。聞く度に悲しくなる。本の重さのいとしさ、ページをめくるときめき、それをどうして棄てられよう。

著者略歴

松平 盟子(まつだいら めいこ)

歌人、歌誌「プチ★モンド」代表

愛知県生まれ。南山大学国語国文学科卒。「帆を張る父のやうに」により角川短歌賞。歌集に『プラチナ・ブルース』(河野愛子賞)『カフェの木椅子が軋むまま』『天の砂』『愛の方舟』など。著書に『母の愛 与謝野晶子の童話』『パリを抱きしめる』など。与謝野晶子のパリ滞在とその文学研究のためパリ第7大学にて在外研究(国際交流基金フェローシップ)。現代歌人協会および日本文藝家協会会員。

 

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バックナンバー

  • 10月21日:チコちゃんに叱られたいと男言うネクタイはずし眼鏡ずりさげ
  • 10月20日:落葉の欅の道にザザザァと波立つ悲哀踏みしめ歩く
  • 10月19日:観覧車ゆるりと巡りブラームスの十九世紀はただに秋映え
  • 10月18日:秋霖のしとどなる傘に響きおりヴァイオリンソナタ一番「雨の歌」
  • 10月17日:長くながく右手に握ると信じたが重みのみ記憶す万年筆の
  • 10月16日:マニキュアを塗る喜びを詠いしは嘘、若き日の惑わしき嘘
  • 10月15日:戦中を晩年とする日々にして杢太郎の筆が選びし草花
  • 10月14日:わが一生の隣に住むは与謝野家の夫婦にて長くながく語らう
  • 10月13日:背表紙のわずかに凹む金文字の全集にまぶし谷崎潤一郎
  • 10月12日:少しずつ峠の高きへ上りゆき見晴らす楽しさそして寂しさ
  • 10月11日:悩んでる場合じゃないと虫たちの命の声は怒濤す今日も
  • 10月10日:片靡きまた響めきてしろじろと芒吹かるる仙石原に
  • 10月9日:指先にすすきの穂いつもやさしくて少女の日々はさわさわと過ぎし
  • 10月8日:鋭角になびく芒の穂とおもう電車通過のとどろきの中
  • 10月7日:目視かなわぬ脂肪の量まで測られて「これがあなたの今」と示さる
  • 10月6日:サクサクという擬音語に片付ける仕事速き人 羨む今日も
  • 10月5日:秋の陽は部屋ふかくまで明るませ踊る阿呆のひとりに及ぶ
  • 10月4日:歓びはからだの内から揺れ出でて沖縄の人らひらひらと舞う
  • 10月3日:紙ぶくろの中に秋ありほくほくの焼き栗の香りいくたびも吸う
  • 10月3日:紙ぶくろの中に秋ありほくほくの焼き栗の香りいくたびも吸う
  • 10月2日:大銀杏ぴんと張る髪うつくしき力士貴乃花わすれず誰も
  • 10月1日:自転車の少女と擦れ違うとき傍らに散れり金の木犀
  • 9月30日:「第二の性」唱えしボーヴォワールあなたに告ぐ、まことに性は海原に似る
  • 9月29日:雨傘を閉じれば雫すすーと落つ 空からいただく雫は冷たい
  • 9月28日:秋の日の鏡よ鏡こんなにも鮮やかなるか〈ほうれいせん〉は
  • 9月27日:良い顔は意志のある顔 ヘレン・ミレン少し頤上げて語れり
  • 9月26日:未完なる歌のせつなさ萩咲けば「安永蕗子の萩色の爪」
  • 9月25日:ワイングラスきゅっきゅっと磨く歓びあり木綿布巾を働かせつつ
  • 9月24日:こおろぎの鳴けば月より銀の糸引き出だすよと詠みし晶子は
  • 9月23日:粒餡のつぶらつぶらに光る秋こころをこめておはぎ味わう
  • 9月22日:白玉のモッツァレラチーズ秋の夜の歯にかみしめて葡萄酒ふふむ

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