《十一月十日》鑓持やりもちの猶振りたつるしぐれ哉

正秀まさひで

「鑓持」は、毛槍を担ぎ、参勤交代の大名行列の先頭を歩く槍持奴のこと。主家の意向を示すために、勇ましく毛槍をふりかざし、往来に睨みをきかせるその姿は、大津絵にもしばしば描かれた。この句は、降ってきた時雨に負けまいと、いっそうムキになって槍を振り立てている、というのだ。時雨で慌てふためき、あるいは消沈する行列一行を、奮励しようとしているのだろうが、天に逆らう姿がいかにも滑稽だ。芭蕉は正秀のこの句について「此集のかざりとよろこび申候。御手柄とかく申難候。」(元禄四年五月二十三日付正秀宛書簡)と高く評価している。「時雨」の伝統的情趣とは一見矛盾する、躍動的情景を捉えることによって、この古めかしい季語の新しい一面を照らし出した手柄を讃えたのだ。

(『猿蓑』)●季語=時雨(冬)

著者略歴

髙柳 克弘(たかやなぎ・かつひろ)

1980年 静岡県浜松市生まれ。2002年 「鷹」に入会、藤田湘子に師事。2004年 「息吹」五〇句によって俳句研究賞受賞。2005年 藤田湘子逝去。新主宰小川軽舟の下、「鷹」編集長就任。2008年 評論集『凜然たる青春』によって俳人協会評論新人賞受賞。2010年 第一句集『未踏』によって第一回田中裕明賞受賞。2017年、Eテレ「NHK俳句」選者。著書に『凜然たる青春』(富士見書房)、『芭蕉の一句』(ふらんす堂)、『未踏』(ふらんす堂)、『寒林』(ふらんす堂)、『NHK俳句 作句力をアップ 名句徹底鑑賞ドリル』(NHK出版)、『どれがほんと? 万太郎俳句の虚と実』(慶應義塾大学出版会)。読売新聞夕刊「KODOMO俳句」選者。浜松市やらまいか大使。

 

 

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バックナンバー

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  • 11月10日:鑓持の猶振りたつるしぐれ哉(正秀)
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  • 11月8日:あら猫のかけ出す軒や冬の月(丈草)
  • 11月7日:襟巻に首引入て冬の月(杉風)
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