《十一月十一日》凩に二日の月の吹きちるか

荷兮かけい

この句は当時評判となり、作者は「凩の荷兮」の二つ名をもらうことになった。「二日の月」は宵の内には消えてしまう、きわめて細い月。荒ぶる凩に、まるで木の葉のように吹き散らされてしまいそうだ、という句意である。『去来抄』には、二日月という珍しい句材を扱っただけで、さしたる句ではないという芭蕉の評を伝えているが、一般には、対話の相手である去来に慮ったものとして了解されている。風と月という、現実的には関わり合うはずもない二者を結びつけたことで生まれるポエジーは、今も鮮度を保っている。たとえば上田五千石の「木枯に星の布石はぴしぴしと」(『田園』昭和32年刊)など、風が天体に影響を与えるという発想の句は、現代俳人にも受け継がれているのだ。

(『あら野』)丸季語=凩(冬)

著者略歴

髙柳 克弘(たかやなぎ・かつひろ)

1980年 静岡県浜松市生まれ。2002年 「鷹」に入会、藤田湘子に師事。2004年 「息吹」五〇句によって俳句研究賞受賞。2005年 藤田湘子逝去。新主宰小川軽舟の下、「鷹」編集長就任。2008年 評論集『凜然たる青春』によって俳人協会評論新人賞受賞。2010年 第一句集『未踏』によって第一回田中裕明賞受賞。2017年、Eテレ「NHK俳句」選者。著書に『凜然たる青春』(富士見書房)、『芭蕉の一句』(ふらんす堂)、『未踏』(ふらんす堂)、『寒林』(ふらんす堂)、『NHK俳句 作句力をアップ 名句徹底鑑賞ドリル』(NHK出版)、『どれがほんと? 万太郎俳句の虚と実』(慶應義塾大学出版会)。読売新聞夕刊「KODOMO俳句」選者。浜松市やらまいか大使。

 

 

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バックナンバー

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