《十一月十日》切り分けた林檎の表面ゆっくりとまた確実に鉄錆を帯ぶ

政治に何かを期待する、という前向きの感情エネルギーを、もう長く私は失っている。平和で衣食住に普通の満足が得られれば、ひとまずそれでいい。でも「ひとまず」は、いつまで続くだろう。

著者略歴

松平 盟子(まつだいら めいこ)

歌人、歌誌「プチ★モンド」代表

愛知県生まれ。南山大学国語国文学科卒。「帆を張る父のやうに」により角川短歌賞。歌集に『プラチナ・ブルース』(河野愛子賞)『カフェの木椅子が軋むまま』『天の砂』『愛の方舟』など。著書に『母の愛 与謝野晶子の童話』『パリを抱きしめる』など。与謝野晶子のパリ滞在とその文学研究のためパリ第7大学にて在外研究(国際交流基金フェローシップ)。現代歌人協会および日本文藝家協会会員。

 

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バックナンバー

  • 11月15日:パーキングに黒き車の光りおり雑誌「明星」廃刊の地に
  • 11月14日:袖をふる小面のシテわかわかし梅なくて梅香る気配す
  • 11月13日:スプーンに掬う光のふくらみを蜂蜜とよぶ 小春の日和
  • 11月12日:「一日にひとかけらを召せ」ありがたく黒大蒜の力にすがる
  • 11月11日:秋冷のりんごの香りを深く吸う〈青ぐらい修羅〉の賢治の隣に
  • 11月10日:切り分けた林檎の表面ゆっくりとまた確実に鉄錆を帯ぶ
  • 11月9日:Mee Tooは日本に起こらず晩秋の薄曇りなる細道をゆく
  • 11月8日:喉もとに熱の巣窟構えたる風邪の奴はまだまだ元気
  • 11月7日:規定量はしっかり守れ風邪薬飲み足りなくてどよんと臥せる
  • 11月6日:味の濃い椎名林檎に癒されず風邪の腕に拉がれる今日
  • 11月5日:同い年は競い馬とは思わねど日独仏のそれぞれの軌跡
  • 11月4日:あの夕陽どこへ沈んだ 過去の時間ばかりが増える初老の渚
  • 11月3日:ありふれた料理を普通につくる日々刃こぼれの文化包丁にぎり
  • 11月2日:電脳の街の虫らに死はあらず苦しみながら鳴き続けるか
  • 11月1日:元号をまたぐ日晴れかまた雨かわからねば傘だけ準備せよ

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