《十一月十一日》秋冷のりんごの香りを深く吸う〈青ぐらい修羅〉の賢治の隣に

「1」が並ぶ今日。宗教的な雰囲気をもつ「1」の羅列だ。 宮澤賢治は「銀河鉄道の夜」で林檎を「苹果」と書き、その匂いを天上の存在のように描いた。詩「無声慟哭」では、死に赴く妹の頬を「まるでこどもの苹果の頬だ」と書いた。

私は今朝も林檎を食する。

著者略歴

松平 盟子(まつだいら めいこ)

歌人、歌誌「プチ★モンド」代表

愛知県生まれ。南山大学国語国文学科卒。「帆を張る父のやうに」により角川短歌賞。歌集に『プラチナ・ブルース』(河野愛子賞)『カフェの木椅子が軋むまま』『天の砂』『愛の方舟』など。著書に『母の愛 与謝野晶子の童話』『パリを抱きしめる』など。与謝野晶子のパリ滞在とその文学研究のためパリ第7大学にて在外研究(国際交流基金フェローシップ)。現代歌人協会および日本文藝家協会会員。

 

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  • 11月12日:「一日にひとかけらを召せ」ありがたく黒大蒜の力にすがる
  • 11月11日:秋冷のりんごの香りを深く吸う〈青ぐらい修羅〉の賢治の隣に
  • 11月10日:切り分けた林檎の表面ゆっくりとまた確実に鉄錆を帯ぶ
  • 11月9日:Mee Tooは日本に起こらず晩秋の薄曇りなる細道をゆく
  • 11月8日:喉もとに熱の巣窟構えたる風邪の奴はまだまだ元気
  • 11月7日:規定量はしっかり守れ風邪薬飲み足りなくてどよんと臥せる
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