《十二月七日》月雪や鉢叩き名は甚之丞じんのじょう

越人えつじん

「月雪」は、月の差す雪道という説、月の夜と雪の夜という説、二つがあるが、ここでは前者と取っておく。「鉢叩き」は、江戸時代には芸能者による門付芸として行われるようになった。越人の句は、『風俗文選』(宝永三年刊)の「鉢叩の辞」に、「あるひはさかやきをすり、或は四方にからげ、法師ならぬすがたの衣引かけたれど、それも墨染にあらず、おほくは萌黄に鷹の羽、打ちがへたる紋をつけて着たれば」と、反俗半僧の姿に興を催しての一句であることが書かれている。月光の差す雪道をやってくる姿はいかにも風雅に通じていそうだが、その名は「甚之丞」などといかにも芸能者らしい、俗っぽい名前である、という句意。俗っぽい名前の芸能者とはいえ、「月雪」の日には、それなりに趣深く見えるということを面白がっているのだ。一句の声調がいかにも仰々しいのが可笑しさに拍車をかける。

(『去来抄』)●季語=鉢叩(冬)

著者略歴

髙柳 克弘(たかやなぎ・かつひろ)

1980年 静岡県浜松市生まれ。2002年 「鷹」に入会、藤田湘子に師事。2004年 「息吹」五〇句によって俳句研究賞受賞。2005年 藤田湘子逝去。新主宰小川軽舟の下、「鷹」編集長就任。2008年 評論集『凜然たる青春』によって俳人協会評論新人賞受賞。2010年 第一句集『未踏』によって第一回田中裕明賞受賞。2017年、Eテレ「NHK俳句」選者。著書に『凜然たる青春』(富士見書房)、『芭蕉の一句』(ふらんす堂)、『未踏』(ふらんす堂)、『寒林』(ふらんす堂)、『NHK俳句 作句力をアップ 名句徹底鑑賞ドリル』(NHK出版)、『どれがほんと? 万太郎俳句の虚と実』(慶應義塾大学出版会)。読売新聞夕刊「KODOMO俳句」選者。浜松市やらまいか大使。

 

 

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