《十二月九日》ネックレスの糸切れて真珠散らばれり首のくびれ今日おそろしき

ハワイの真珠湾攻撃は、日本時間の一九四一年一二月八日未明だった。翌九日の新聞各紙は華々しい戦況を伝えたが、その後の展開を知る私たちは胸が苦しくなる。越えてはならぬ一線を越えるとは、なんと怖いことか。

著者略歴

松平 盟子(まつだいら めいこ)

歌人、歌誌「プチ★モンド」代表

愛知県生まれ。南山大学国語国文学科卒。「帆を張る父のやうに」により角川短歌賞。歌集に『プラチナ・ブルース』(河野愛子賞)『カフェの木椅子が軋むまま』『天の砂』『愛の方舟』など。著書に『母の愛 与謝野晶子の童話』『パリを抱きしめる』など。与謝野晶子のパリ滞在とその文学研究のためパリ第7大学にて在外研究(国際交流基金フェローシップ)。現代歌人協会および日本文藝家協会会員。

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 12月13日:おにぎりの真ん中に紫蘇と梅干しの極楽ありたり映えつつ酸ゆし
  • 12月12日:しろたえの蕪さくさくと割けば見ゆ白秋の雪ふりし舗石
  • 12月11日:薄明の窓より曝すわが顔を「刃物のやうな冬」が擦過す
  • 12月10日:枡ごとの文字に才という筋力あり寺山修司なお挑発す
  • 12月9日:ネックレスの糸切れて真珠散らばれり首のくびれ今日おそろしき
  • 12月8日:恋は力、『みだれ髪』ひらきまた思う冬雲分けて光降りくる
  • 12月7日:含羞の上目づかいの実像は知られず晶子を生き抜きし志よう
  • 12月6日:氷雨ふる凱旋門のマリアンヌ像その顔半ば砕かれて没す
  • 12月5日:「労働は尊し」ひくく呟けどアラ還過ぎの身には堪える
  • 12月4日:議員らが労働力と言うたびに異国の機器を値踏みするごとし
  • 12月3日:刷り上がりし歌誌の匂いをたしかめて今年最後の封入作業す
  • 12月2日:自由が丘駅前にいまも古書店あり踏んづけたき過去おもいだす場所
  • 12月1日:沈むべき必然に引きこまれゆく落暉なりその余光に浸る

俳句結社紹介

Twitter