《一月十五日》野良猫のオナカシロコの背中にももと成人の日の風がふく

出勤。早く着いたので谷保駅前のモスバーガーでコーヒー。使用する野菜の生産者が掲示されていて、トマトは永田和宏さんが作っている。もちろん歌人の永田和宏さんではなくて同姓同名の人なのだが、多方面に活躍する永田さんならトマトを作っていても不思議はないと思ってしまう。帰宅後コンビニにボールペンを買いに行き、近所に住んでいる可愛い猫に会う。わたしと妻はオナカシロコと呼んでいるが、ナタリーと呼ぶ人もいるだろう。

著者略歴

藤島 秀憲(ふじしま ひでのり)

歌人、「心の花」編集委員

1960年、埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業。「日本語の変容と短歌――オノマトペからの一考察」により現代短歌評論賞。第1歌集『二丁目通信』により現代歌人協会賞、ながらみ書房出版賞。第2歌集『すずめ』により芸術選奨文部科学大臣新人賞、寺山修司短歌賞。現在「歌壇」「うた新聞」「現代短歌新聞」にエッセイを連載。現代歌人協会会員、NHK学園短歌講座専任講師。

 

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バックナンバー

  • 1月24日:妻は風邪われは風邪気味午後四時に「お先に失礼します」と立てり
  • 1月23日:はじめての冬を過ごせるすずめたち羽根で覚えよさまざまな風
  • 1月22日:ふたりして咳き込む夜よ多摩川の浮き寝の鳥が聞く風の音
  • 1月21日:はばたかず(とはいえ時に羽ばたきて)鳶は楕円を冬空に描く
  • 1月20日:献じおり誰も誰もがこの夜の酒の時間を小紋潤氏に
  • 1月19日:寝てしまうつもりで観はじめたるシネマ雪の逃走シーンに目覚む
  • 1月18日:雪客の鷺は食をとる太々と自治の境を流れる川に
  • 1月17日:あきらめて行きし経営学科なり酒の不作法見つつ覚えき
  • 1月16日:空き腹に収める穴子ガリたまご ビール飲むには二時間早い
  • 1月15日:野良猫のオナカシロコの背中にも元成人の日の風がふく
  • 1月14日:五十八年使い来し舌がひらひらと歌を持ち上げそして落しぬ
  • 1月13日:お通しを連れてジョッキの中が来る山にかくれて入り日は赤し
  • 1月12日:ベローチェに行きてようやく作りたる下句さえも斬って捨てらる
  • 1月11日:皺なれど深めてよきは笑いじわポストが赤いだけでも笑え
  • 1月10日:紀伊國屋書店玉川高島屋店でわたしを呼びとめた雨
  • 1月9日:生簀には馬面剥の二匹おり低カロリーの白身がおよぐ
  • 1月8日:動脈に溜まるコレステロールあり人が詰まれば電車は混めり
  • 1月7日:指先の赤いインクを気にしつつ石狩鍋の灰汁を掬えり
  • 1月6日:手直しはあしたの朝のひと仕事 まちくたびれた舌に酒乗す
  • 1月5日:世田谷の畑に来たる寒すずめ日差しのなかにふくふく太る
  • 1月4日:谷保駅はYahoと読むべし Yahoo! とぞ初めて降りた日には読みしが
  • 1月3日:牢獄の匂い嗅ぎつつ観ていればエンディングロールたちまち来たり
  • 1月2日:一合ですっかり酔える酔うならばいつもの酒をいつもの人と
  • 1月1日:飲みたりぬまま帰り来て飲みたりぬ心のためにつくる雑炊

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