《三月十四日》ミモザまたミモザやさしき人の上に

いわゆるホワイトデーらしいが、近年、その影が薄くなっているのは素晴らしい。バレンタインデーにしてもこの日にしても、何だか企業に踊らされているような気がして。
今日は某番組の最終収録日である。二年間担当して来たが、今後はごく自由になる。
番組の出演者さんたちは本当に可愛くて熱心で素晴らしかったし、スタッフの皆さんもそれぞれが精いっぱい頑張ってくれた。特筆すべきは、出演者の皆さんが仲良く楽しくやってくれていたこと。一応はライバル同士ではあるけれど、そういった事情を超えて、演者さんたちが毎回仲良く努力してくれたことは、わが一生の思い出になることだろう。
二年近く前、番組を引き受けた時は気持ちが真っ暗だった。俳句と全く無縁の人たちをどう導けばいいのか、途方に暮れていた。「俳句とやらを始めるのだけれど、どうすれば上達するのか全くわからない」という人たち。そして、歳時記なんぞひもといたこともない人たち。俳句に興味をもって「やってみようか」と思ったならいいけれど、仕事の一環としてたまたまやらざるを得なくなった人たちと接するのはかなり厳しい。
でも、いいかたがたに恵まれて、幸福な番組になった。ちなみに、収録の合間に届けられる出前の新宿のおにぎりがおいしくて。そして、湯を注げば頂けるコンビニのお味噌汁もおいしくて。じつはTVの現場って、とても慎ましいのですね。わが「群青」の若手のほうが、よっぽど贅沢してます。鉄板焼、また食べましょうね。

●季語=ミモザ

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著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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バックナンバー

  • 3月26日:下見とてすべてととのふ花盛り
  • 3月25日:あらあらとさくらさくらと褒めそやす
  • 3月24日:連翹と高校生の匂ひかな
  • 3月23日:栄冠はゆつくりと来る夕桜
  • 3月22日:時刻表より滔滔と春の水
  • 3月21日:春分の日のおほどかな鳩時計
  • 3月20日:彼岸過にあらねど雲のうつくしく
  • 3月19日:町名のゆかしうるはし月日貝
  • 3月18日:すでに春休だれにもはばからず
  • 3月17日:沈丁のこれはゆふべの火の匂ひ
  • 3月16日:遠くよりわが名きみの名椿餅
  • 3月15日:原稿を書かねば椿朽ち始む
  • 3月14日:ミモザまたミモザやさしき人の上に
  • 3月13日:ゆつくりと空は流れて蕨餅
  • 3月12日:少しだけ歯科医に恋を花辛夷
  • 3月11日:ヒヤシンス地震に酔ふは怖ろしく
  • 3月10日:同級生らしきを探す初桜
  • 3月9日:赤き花あれば振り向く卒業期
  • 3月8日:生協の届けてくれるチューリップ
  • 3月7日:遺影とてこんなに若し桜漬
  • 3月6日:千分の一のひかりを柳の芽
  • 3月5日:受賞者にあらねど春ショールの光
  • 3月4日:カーテンにわが猫の影雛納
  • 3月3日:雛の日のゆるゆる匂ふ醤油かな
  • 3月2日:鶴引くやみづの匂ひをしたたらせ
  • 3月1日:留守番の猫に猫雛かざりたる

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