《五月十五日》馥郁と山河のにほふ新茶かな

毎年、静岡の「群青」の同人さんから新茶を頂く。ありがたいことである。
今のようにペットボトル入りのお茶がなかった頃は、駅弁とセットで売られていたお茶がまずかった。ところが父と一緒に行った静岡で買ったお茶はとてもおいしかった。なぜだろうと思ってよく見ると、茶葉がたっぷり使われていたからだった。なるほど、茶どころは駅弁用のお茶もおいしいんだ、といたく感心した。かれこれ四十年以上前の話である。
小川軽舟さんは俳句日記をまとめた著書の中で、ビジネスホテルの質がわかるのは「タオル」だと書いていた(たぶん)。「なるほど」と大いに納得した。それを真似ていえば、旅館の質は「お茶」でわかるかもしれない。そうそう、静岡の親類たちの全ての家に茶畑があった。そこで写して貰った、とんでもなく鼻ぺちゃな子ども時代の自分の写真が恥ずかしい。

●季語=新茶

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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