《六月十三日》はつかなる隙間隙間を草むしり

夕刻から「群青」の外郭団体ふうの句会。私が管理人をつとめる中野区の一軒家でおこなう。ここにはしょっちゅう行けるわけではないが、行けばかならず草むしりをちょっとする。畑や広い庭ではないから、それほどの手間ではないのだが、とにかく放っておけばどこからでも雑草は生えてくる。植物の強さといったらたいしたものだ。
自分の家はちっとも綺麗にしないくせに、「管理」を考えると無性にきちんとしたくなるのはなぜだろう。それは、もしかすると「ここを預かっている」という思いゆえか。自宅だと年末にしかしない表札の掃除までしたくなるのは不思議である。
そういえば、かつて滞在していた倫敦郊外のフラットも綺麗にしていた。前に住んでいた住民が汚しまくっていたことに呆れながら。キッチンの窓にカフェカーテンを掛け、バスタブはぴかぴかに磨いた。そのフラットは扉を閉めると勝手にロックされる構造になっていて、鍵を忘れて外出すると締め出される危険があった。ところが、私はなぜか一度もそういった事態になったことがない。たくさん泊まった出張先のホテルでも同様である。なぜ?ドアの内側の床に「鍵!」というメモを必ず置いておくからだろうか。

●季語=草むしり

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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