《七月十四日》永遠に埃降りつぐ巴里祭

巴里祭。実感があるかどうかは曖昧ながら、季語として定着してしまったこの日をひそかに愛している。名前がお洒落だから。
この時期は例年、さる学校の合宿に参加する。だから、実は「気分は巴里祭」などとてもとても。しかし、要請があるだけ、まだ求めてくれる人がいるという証であり、ありがたいと思いませんと。
以前の合宿の都心の宿は凄かった。お風呂は仕方ないとしても、トイレが部屋になかったことがつらかった。しかも、廊下の先にあったのは男女共用だった。朝食には謎の食品が供されていた。オムレツのようなもの、不思議な海藻、今どき珍しい不味いご飯。わが人生における宿は、トイレ共用から特別室まで振れ幅が大きすぎる。

●季語=巴里祭

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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バックナンバー

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  • 7月15日:海の日の枠だけのこる風呂その他
  • 7月14日:永遠に埃降りつぐ巴里祭
  • 7月13日:弾らしきものはらはらと夜店かな
  • 7月12日:夕映えをたしかめんとて釣忍
  • 7月11日:この地にも萬屋のあり火取虫
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  • 7月9日:りんらんと南部風鈴らしからず
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