《七月十三日》なくなってしまったビルの踊り場を思い出すとき一人笑いせり

十八時から中野サンプラザで「心の花」東京歌会。約六十人が参加。一人一首歌を出して、二首に投票する。かつては票が集まりやすい歌というのがあって、質の良し悪しにかかわらず猫の歌と母の歌は人気があった。でも、誰が言ったわけではないが、それは良くない傾向だという雰囲気が生まれて来て、票が集まらなくなった。自浄作用と言ってしまうのは変だけど、自然といい方向へ向かって歌会が変ってゆく、そういう歌会からは新しい才能が次々と出て行っている。
二次会は赤ひょうたん。いつものことながら二時間ほどで解散。夜に歌会があるのは飲む時間が少なくて済むからか。とても健康的である。

著者略歴

藤島 秀憲(ふじしま ひでのり)

歌人、「心の花」編集委員

1960年、埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業。「日本語の変容と短歌――オノマトペからの一考察」により現代短歌評論賞。第1歌集『二丁目通信』により現代歌人協会賞、ながらみ書房出版賞。第2歌集『すずめ』により芸術選奨文部科学大臣新人賞、寺山修司短歌賞。現在「歌壇」「うた新聞」「現代短歌新聞」にエッセイを連載。現代歌人協会会員、NHK学園短歌講座専任講師。

 

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