《七月十四日》妻とわれの記憶がすこし食い違い宗円寺どこ宗円寺どこ

休み。『藤原月彦全句集』を読んで過ごす。藤原月彦とは藤原龍一郎さんが俳句を作る時のペンネームである。一九七五年から八九年までの十二年間に六冊の句集を出している。八七年、六冊目の句集『魔都 美貌夜行篇』を出した六か月後に第一歌集『夢見る頃を過ぎても』を出し、以後は主に歌人として活動するようになった。
最近はご一緒する時間がなくなってしまったが、藤原さんとは連れ立って何度か落語を聴きに行った。新宿の道楽亭やミュージックテイト、浅草の東洋館などマニアックな会場が多かった。「短歌研究」で落語をテーマに対談したこともあった。そんな触れ合いを時々思い出しては、混沌とした十七音の世界に踏み込んで行く。

著者略歴

藤島 秀憲(ふじしま ひでのり)

歌人、「心の花」編集委員

1960年、埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業。「日本語の変容と短歌――オノマトペからの一考察」により現代短歌評論賞。第1歌集『二丁目通信』により現代歌人協会賞、ながらみ書房出版賞。第2歌集『すずめ』により芸術選奨文部科学大臣新人賞、寺山修司短歌賞。現在「歌壇」「うた新聞」「現代短歌新聞」にエッセイを連載。現代歌人協会会員、NHK学園短歌講座専任講師。

 

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バックナンバー

  • 7月18日:ガラケーを使いつづけるこの意地も母よあなたの遺産のひとつ
  • 7月17日:環八に沿いて繁れるもみじば楓ときに白バイ隊員かくす
  • 7月16日:今日中にとどくAmazon 非常食を注文してはリュックに満たす
  • 7月15日:二年後に死ぬこと知らず三歳のみっちゃんは泣くカメラの前に
  • 7月14日:妻とわれの記憶がすこし食い違い宗円寺どこ宗円寺どこ
  • 7月13日:なくなってしまったビルの踊り場を思い出すとき一人笑いせり
  • 7月12日:あじさいの白の褪せつついまだ梅雨 めっきり酒量このごろ増えて
  • 7月11日:瀬をわたり来て世田谷に吹く風に雨が匂えり午後は降らんよ
  • 7月10日:結婚の祝に賜いし湿度計あさなあさなにさす八十台
  • 7月9日:手の甲のメモもたちまち「村さん」を残して消えぬ 出梅遠し
  • 7月8日:関取の三人をおろしたるタクシー空車となりてわれひとり乗す
  • 7月7日:ともだちの数の割には「いいね」の少な 生え際よりもあわれ気にせり
  • 7月6日:ペルシャより来たる火の神わがために今は竃にピザを焼きおり
  • 7月5日:ひと群るる江戸前寿司の桶にさえ残るものあり乾反りゆくまで
  • 7月4日:恋をする源氏螢の明滅を見て来て今宵ふたり静けし
  • 7月3日:乗り切れぬ一人となりて次を待つ五分 五分でやむ雨もある
  • 7月2日:遺歌集を読みて今宵は灯を消さず死に凭れつつ詠みし五百首
  • 7月1日:濡れ傘を誰もがさげている朝の電車にくもる眼鏡そのほか
  • 6月27日:町猫となるには手術に耐えるべしオナカシロコに苦難はありき

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