《八月十二日》機影その淡きを惜しむ秋はじめ

ミケの会。席題をさてどうしましょう。初秋から秋は結構難しい。季語に華がない。
若い人はほとんど知らないと思うけれど、8・12といえば私にとって日航機墜落事故である。その日はめったに繁忙期には帰郷しない私がなぜか余市に帰り、積丹半島の民宿に泊まっていたのだった。二十五歳になる直前だった。
積丹半島にはまともなホテルなどない。結果として民宿になってしまうわけだが、昼間、海胆の密漁めいた遊び(実際には盗んでいません。怖い漁師さんたちが監視してます)をして宿に帰ってきたら、旅客機が行方不明だという。青くなった。その三日後にはJALで帰る予定だったからだ。
飛行機には今でも乗る。今年は、済んだものも加えて通算で十五回ほど。運に恵まれますように。

●季語=初秋

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 8月18日:はつあきや虹色の鯛前にして
  • 8月17日:しろがねの玉はらはらと秋扇
  • 8月16日:幸せが欲しいとひぐらしのほとり
  • 8月15日:蚊にどこか似てゐる数機敗戦日
  • 8月14日:虫の音や同窓会の煌々と
  • 8月13日:つくづくと余市は遠し盂蘭盆会
  • 8月12日:機影その淡きを惜しむ秋はじめ
  • 8月11日:盆棚の何か足りなき心地かな
  • 8月10日:朝顔や締切てふはいきもので
  • 8月9日:あどけなき猫の散らばり長崎忌
  • 8月8日:ちぎるべく仏蘭西麺麭や今朝の秋
  • 8月7日:高原に遊子のこころ夏惜しむ
  • 8月6日:鉄板より薄き煙や広島忌
  • 8月5日:性格はたぶんお七で夜の秋
  • 8月4日:夜濯やスイッチその他思ひつつ
  • 8月3日:三毛猫の粉砕せむと立版古
  • 8月2日:幾重にも虚栄のひかり花氷
  • 8月1日:短髪のものたりなさや夏帽子

俳句結社紹介

Twitter