《八月十三日》つくづくと余市は遠し盂蘭盆会

月おくれのお盆の行事が各地で行われているのだろう。新しい秋の歳時記には「盆帰省」という季語が立項されている。たしかに、夏の「帰省」と「盆帰省」とでは、意味合いがかなり違う。前者は学生さん等が田舎に帰ること、後者は一家で移動して、実家のおじいちゃんおばあちゃんに孫を見せるためにあるように思われる。
お盆の移動は、実際には十二日ぐらいに行われることが多い。この時期に飛行機に乗るとえらい目に遭う。座席の上の荷物入れはぎっしり、子どもは泣くわ、搭乗口はごった返すわ、CAさんは殺気立っているわで、生きた心地がしない。上京してかれこれ四十年だが、私がこの時期に帰郷したのは二回きり。

●季語=盂蘭盆会

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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  • 8月15日:蚊にどこか似てゐる数機敗戦日
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  • 8月13日:つくづくと余市は遠し盂蘭盆会
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  • 8月11日:盆棚の何か足りなき心地かな
  • 8月10日:朝顔や締切てふはいきもので
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