《八月十五日》蚊にどこか似てゐる数機敗戦日

季語としては不完全かもしれないせいで歳時記等には載っていないけれど、この日が来ると〈厠にて国敗れたる日とおもふ 能村登四郎〉を思い出す。
この日に重要閣僚等が靖国に参拝すると、報道のためにヘリコプターがたくさん飛ぶ。ある年などは、何機もホバリングしているのがこのマンションの部屋から見えたことがあった(靖国神社には、何とか歩いて行ける距離にある)。言い方は悪いが、蚊によく似ていると思った。映画の一シーンのような、ばりばりと音を立てているヘリを九階の部屋から真横に眺めていたあの気分を、どう説明すべきだろう。

●季語=終戦記念日

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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バックナンバー

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  • 8月16日:幸せが欲しいとひぐらしのほとり
  • 8月15日:蚊にどこか似てゐる数機敗戦日
  • 8月14日:虫の音や同窓会の煌々と
  • 8月13日:つくづくと余市は遠し盂蘭盆会
  • 8月12日:機影その淡きを惜しむ秋はじめ
  • 8月11日:盆棚の何か足りなき心地かな
  • 8月10日:朝顔や締切てふはいきもので
  • 8月9日:あどけなき猫の散らばり長崎忌
  • 8月8日:ちぎるべく仏蘭西麺麭や今朝の秋
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  • 8月4日:夜濯やスイッチその他思ひつつ
  • 8月3日:三毛猫の粉砕せむと立版古
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