《九月十一日》秋蒔や経験せねばすべてえう

青山のカルチャーの日。みんな元気に来てくれると嬉しい。八月以降、いきなり暑くなったのでちょっと気掛かりである。
九月十一日といえば、アメリカの同時多発テロ事件を記憶している人が多いだろう。二〇〇一年、少し先に帰宅していた私は、ニュース番組を見ながらうがいをしたり、お風呂の用意をしていた。そこに、あの映像である。「ぽかんと口をあける」という表現は大げさだとそれまで思っていたが、本当にそうなるのだとあの時知った。
子どもの頃にテレビで見たベトナム戦争や浅間山荘事件、そして長じてからの阪神淡路大震災やサリン事件。足掛け十年前の東日本大震災。実際に多少なりとも経験したものは東日本大震災以外ないのだけれど、映像の記憶は凄い。体験したつもりになることが怖い。

●季語=秋蒔

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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バックナンバー

  • 9月22日:澄むものにコンソメ加へ竜田姫
  • 9月21日:紛ふことなきまぶしさの赤のまま
  • 9月20日:あはあはとおほぢが鼻梁秋彼岸
  • 9月19日:糸瓜忌の布のしづけさ日のしづけさ
  • 9月18日:川の字にわが身を置きて秋灯
  • 9月17日:葡萄酒に翳りを足せば天の川
  • 9月16日:敬老の日や読み捨ててしまふ空
  • 9月15日:丘と思へば丘とも見えて秋桜
  • 9月14日:十六夜や面ざし淡くなりながら
  • 9月13日:月まつる少しうれしき手暗がり
  • 9月12日:白萩も金剛石もひとひらと
  • 9月11日:秋蒔や経験せねばすべて杳
  • 9月10日:こころ早や宴に至る初紅葉
  • 9月9日:菊の日や少し不良でやさしくて
  • 9月8日:短さも長さも秋茄子の光
  • 9月7日:秋潮に櫂まかせたるまひるかな
  • 9月6日:新涼や船上に身をひとつ置き
  • 9月5日:障子貼る日をやはらかくするために
  • 9月4日:猫のことははのことすぐ秋の声
  • 9月3日:菓子捨ててのちの混沌迢空忌
  • 9月2日:さぼてんは色なき風に馴染まざる
  • 9月1日:乾電池らしく転がり震災忌

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