《九月十二日》白萩も金剛石もひとひらと

つい先日、誕生日に指環を買って貰った。ピアスや時計などの年もあったが、ここ数年は指環。
指環を見ると、その年に何があったかを思い出す。北海道の母が急逝した年は、粒の大きなダイヤモンドだった。父と異なり愛情表現の下手な母だったが、それでも亡くなった時の衝撃は大きかった。その葬儀を経た後に夫が買ってくれたものは、誕生日プレゼントにしては豪華すぎるものだった。おそらくは、「母とは気が合わない」とずっといい続けてきた私が思いがけず見せた哀しみを、くみ取ってくれたからなのだろう。
今年の誕生日は夫自身の母が亡くなってすぐでもあり、指環はないのだろうと思っていたが、ちゃんと買ってくれた。繊細かつ華やかなデザインのものである。
アンケートを実施したわけではないけれど、毎年の妻の誕生日に宝石を贈る人は少ないらしい。以前、「え、ふつうはないのですか」と呟いたら、その場にいた私以外の女性全員が「そんなの、ない!」「ない!」と口々にいった。

●季語=萩

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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