《九月十四日》十六夜や面ざし淡くなりながら

初雁句会の日。長丁場となる。
この日は六歳のころから親しい友人の誕生日。あちらは北海道で、こちらは東京だからなかなか会えないが、「いつ会ってもちっとも変わらない人」というと、彼女のことを必ず思い出す。奇跡のように変わらない人がこの世にはいて、そういう人たちは仕事や結婚等による環境の変化に左右されない。
その彼女とたびたび話題にしたのが、小学校の同級生だった本郷まさこちゃんのこと。まさこちゃんは途中で転校したのだけれど、なぜか皆がずっと気にしていた人だった。すらりと背が高くて、品のある人だった。そしてなぜか、まさこちゃんを話題にする時、皆がフルネームでいうのだった。
その後、まさこちゃんがずいぶんと年の離れた男性と結婚したと聞いた。そして娘さんを遺して亡くなったと聞いた。そのお嬢さんを育てたおばあさんが、近年、余市の姉と知り合いになった。よくいわれるけれど世の中は狭い。と同時に、数年も学校に在籍していなかったひとを慕い、その軌跡を知りたがるわれわれの心理も面白い。

●季語=十六夜

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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