《十月十日》動かざるクレーンに雨の降りしきる今日は昨日のままなり渋谷

出勤。リポートの点検と機関誌の校正をする。ともに集中力の要る作業だから、目薬を忘れてはイケナイ。目薬は何でもいい。ドラッグストアに行って、その日一番安いもので、いい。
帰宅して歌集を二冊読む。田中拓也さんの『東京』(とうけい、と読む)と田中薫さんの『土星蝕』。二人とも「心の花」の歌人。田中薫さんの歌集は解説を書かせてもらっているのでゲラでも読んでいるのだが、やはり一冊になると味わい深い。なぜ、田中さんが私に解説を書かせてくれたかと言うと、自分の歌は面白味に欠けているので、面白い人に書いてもらいたいと思ったとのこと。でも、田中さんの歌は十分に面白いし、私は左程おもしろくない。

著者略歴

藤島 秀憲(ふじしま ひでのり)

歌人、「心の花」編集委員

1960年、埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業。「日本語の変容と短歌――オノマトペからの一考察」により現代短歌評論賞。第1歌集『二丁目通信』により現代歌人協会賞、ながらみ書房出版賞。第2歌集『すずめ』により芸術選奨文部科学大臣新人賞、寺山修司短歌賞。現在「歌壇」「うた新聞」「現代短歌新聞」にエッセイを連載。現代歌人協会会員、NHK学園短歌講座専任講師。

 

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  • 10月10日:動かざるクレーンに雨の降りしきる今日は昨日のままなり渋谷
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  • 10月8日:浮く雲を見ては秋だと父言いき冬にも春にも夏にもそして
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  • 10月6日:北方はもう読まぬらし だが友は今もコートの襟たてるらし
  • 10月5日:花火へとむかう列には初恋のひとに似る人いるはずである
  • 10月4日:かたゆでの玉子となりて満員の車両に秋のわたしが傾ぐ
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  • 10月2日:ひとりひとり人の出でゆき閉店の近づくカフェにペンを落としぬ
  • 10月1日:ひりひりと雄しべ雌しべを痛めつつ彼岸花ゆれる秋風のなか

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