《十月十日》稲刈や葬儀は一度きりの華

昔の体育の日。天気の特異日だというこの日付が大事だというのに、安易に移動祝祭日にされたことが残念。この日は姑さんの骨を納める日でもある。
実家も婚家先も親類が少ないということで、一族が一堂に会するといった機会を私はあまり経験していない。さっさと東京に来てしまったことも影響しているけれど、自分のいとこの名前も怪しいぐらいであり、全て姉に任せきりの状態である。ちなみに掲出句の季語は、実家の姓にちなんだもの。
北海道では、結婚式のみならず葬儀でもなぜか親族の記念写真を撮る。奇異に思われるかもしれないが、これが案外後で役に立つ。「ああ、あの時は、勲叔父さん元気だったんだね」などと、話が盛り上がる。結婚は二度三度あるかもしれない、しかし、葬儀はその人につき、一度きり。

●季語=稲刈

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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