《十月十一日》上品な批判の欲しく女郎花

某協会の若手句会が夕刻より。片山由美子先生とペアを組む。
つい先ごろ出た片山由美子著『季語を知る』(角川選書)は、近年稀な本格的な季語論を展開してくれた。季語が紛れもない日本文化を担うものであること、そしてその季語と取り組む俳人の姿勢について問い直してくれる名著だった。
ここに初めて書くが、二十年以上前、わが第一句集の書評を「港」の大牧広先生が片山先生に依頼したことがある。『貴族』について、片山先生は「これは臓器移植に等しい句集」と看破された。すなわち、短歌の名残を引きずっていたことを見事に見抜かれてしまった。大牧先生はおろおろし、「これをこのまま載せますか、未知子さん、どうしましょう、未知子さん」と言った。「え。これほど上品な批判は、もはや芸術の域に達しています」とあくまでも掲載に向けて私は押し切った。片山先生、ごめんなさい。大牧センセイ、気が小さかったので。
半端な賞讃も半端な批判も美しくない。ましてや、持論を正当化するための他者のことばの無駄な援用など言語道断である。一人ぼっちは嫌だけれど、いざという時に一人で立っていられる体力をわれわれは持ちたい。

●季語=女郎花

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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