《十一月九日》首をかけ守るべきものわれになく腕立て伏せは五回が限度

「心の花」東京歌会の吟行会が清澄白河で行われているが、所用があって欠席する。一昨年は横浜の三溪園で、昨年は上野動物園で開催され、いずれも佐佐木幸綱先生が一位を獲得した。かつて吟行会にめっぽう強い女性がいて、「吟行会の女王」と呼ばれていたが、今、女王の座にいるのは幸綱先生ということになる。さて今年はどうなっていることか?
俳句の吟行会に遭遇したことが二度ある。場所は、東京大学の三四郎池、そして日比谷公園の首かけイチョウ。短歌の吟行会と違って、メモ帳を手にしている方が多い。その場で句を作って書き留めている様子。俳句は瞬発力と聞くが、なるほどと思った。短歌の吟行ではメモ帳をあまり持たない。ただ見て歩く。歌を作るのは歌会会場に行ってからという人が多い。そのことと関係するかは分からないが、言葉を繋ぎ合わせてゆく短歌は、瞬発力よりも筋力を必要とする。

著者略歴

藤島 秀憲(ふじしま ひでのり)

歌人、「心の花」編集委員

1960年、埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業。「日本語の変容と短歌――オノマトペからの一考察」により現代短歌評論賞。第1歌集『二丁目通信』により現代歌人協会賞、ながらみ書房出版賞。第2歌集『すずめ』により芸術選奨文部科学大臣新人賞、寺山修司短歌賞。現在「歌壇」「うた新聞」「現代短歌新聞」にエッセイを連載。現代歌人協会会員、NHK学園短歌講座専任講師。

 

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