《十一月十一日》 はつふゆの紅茶をひとつくださいな

一が四つ並ぶ日。神楽坂の美容室に行く日で、あとはひたすら選句をする。
二十数年前のちょうどこの頃、英国に一か月間の「お試し滞在」をした。現地の日本人子女の勉強をみる、その慣らし運転のような滞在だった。
全てが灰色だった。どんよりと曇った空、まずい珈琲、高い高い物価。その中での救いは、どこで飲んでもおいしいミルクティーだった。駅のキヨスクのようなところで買っても、ちゃんと牛乳のポーションがついてきた。日本の紅茶については、ぬるい湯で淹れることは改善されたが、いつまで経っても珈琲用のミルクで済ませようとするのが解せない。あれはまずい。

●季語=初冬

著者略歴

櫂 未知子(かい・みちこ)

一九六〇年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人 俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。
句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古斑』、第三句集『カムイ』にて、第57回俳人協会賞、第10回小野市詩歌文学賞を受賞。句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第十八回俳人協会評論新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

 

 

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