《十二月三日》冬の日の電車に揺れる未消化の牛蒡てんぷら蕎麦と第五句

お店の開店とか、駅前のクリスマスツリーの点灯式とかに出くわすと、鼓笛隊が来てパレードするのではないかと期待してしまうところが私にはある。「鼓笛隊、来るかな?」と妻に言うと「また」と笑われる。祝いごと=鼓笛隊が来るものと私は思い込んでいる。
で、ある日、なんとなく「鼓笛隊」を検索してみると、最初に出て来たのが、埼玉県上尾市にある小学校の鼓笛隊だった。上尾は私が育った町。なんと上尾は鼓笛隊が盛んな町だったのだ。とすると、小さい頃、鼓笛隊を何度も見たはずである。それで刷りこまれた。やっぱり鼓笛隊は私の原風景だった。

著者略歴

藤島 秀憲(ふじしま ひでのり)

歌人、「心の花」編集委員

1960年、埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業。「日本語の変容と短歌――オノマトペからの一考察」により現代短歌評論賞。第1歌集『二丁目通信』により現代歌人協会賞、ながらみ書房出版賞。第2歌集『すずめ』により芸術選奨文部科学大臣新人賞、寺山修司短歌賞。現在「歌壇」「うた新聞」「現代短歌新聞」にエッセイを連載。現代歌人協会会員、NHK学園短歌講座専任講師。

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 12月8日:電車にも雨樋あるを今朝知りぬ五分遅れの下り待ちつつ
  • 12月7日:ついてきた影にとつぜん追い越さる街灯白き四谷の坂に
  • 12月6日:追われてる猫をかくまう空間が我が本棚になきぞ悲しき
  • 12月5日:硝子窓の向うに雨は降りながらわたしに「今日は雨」と書かせる
  • 12月4日:街の灯をうかべ流るる丸子川、橋くぐるとき街の灯の消ゆ
  • 12月3日:冬の日の電車に揺れる未消化の牛蒡てんぷら蕎麦と第五句
  • 12月2日:置時計の狂い直せりわが留守を青き電波が部屋に入り来て
  • 12月1日:右バッターボックスの深き水たまり 咳き込みにつつ遠く見ている

俳句結社紹介

Twitter