《一月十五日》布団干し網戸を洗ひ風通しこころ棲まはす空き家をつくる

全国の空き家は836万軒あるという。空き家だけでできた巨大都市があることになる。無人の都市。空き家と廃墟とは決定的になにかが違う。何が?

著者略歴

川野 里子(かわの さとこ)

歌人 歌誌「かりん」編集委員

1959年大分県生まれ。千葉大学大学院修士課程修了。読売新聞西部歌壇、日本農業新聞選者など。立正大学、放送大学非常勤講師。平成20年度、21年度NHK教育放送「NHK短歌」選者。

歌集に『太陽の壺』(第13回河野愛子賞)、『王者の道』(第15回若山牧水賞)。『硝子の島』(第10回小野市詩歌文学賞)、『歓待』など。評論集に『幻想の重量―葛原妙子の戦後短歌』(第6回葛原妙子賞)、『七十年の孤独-戦後短歌からの問い』、『鑑賞 葛原妙子』(笠間書院)など 。

 

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バックナンバー

  • 1月18日:スカイツリー流木のやうな白さもて突つ立ちてをりいづこから来し
  • 1月17日:帰りきて帰りゆくなり渡りするツグミにおほきな空といふ家
  • 1月16日:IターンしてUターンして自由形ありバタフライあり友の生き方
  • 1月15日:布団干し網戸を洗ひ風通しこころ棲まはす空き家をつくる
  • 1月14日:河馬のやうに目を閉ぢ時を止めてをり亡き母もそこに来てゐる陽だまり
  • 1月13日:変はらないね変はらないねと笑ひあひ変はりてゆけり私も友も
  • 1月12日:銭湯にまひるのひかり笑はせてくれた友亡くわたしは裸
  • 1月11日:よく晴れて祖母山は全裸ふくふくと着膨れて吾はにんげんのまま
  • 1月10日:生きのこり死にそこなひに死にわすれ名乗りて楽しい婆ちやんばかり
  • 1月9日:カメムシひとつ畳に転がり死にてをりどこかへ行かむとしたるこの虫
  • 1月8日:鍵穴に鍵を刺すとき空き家にはおほきなさびしい耳ひとつある
  • 1月7日:ホッチキスの針を飛ばして見失ふパンドラの箱の中なりここは
  • 1月6日:瞬間冷凍されし白さに富士ありき特急過ぎしホームのかなたに
  • 1月5日:金目鯛ただいちど生まれ驚いて吾を見つめて見ひらいたまま
  • 1月4日:くたびれた布団とくたびれきりし子の泥沼の愛 そろそろ起きよ
  • 1月3日:真つ白な手帳ひらけば未来とははろばろとありて死後に似てをり
  • 1月2日:たのしいなたのしいなと子供ゆき破魔矢が一本通りゆく窓
  • 1月1日:すずめ1すずめ2を呼びすずめ3膨らんだまま 謹賀新年

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