《七月一日》天麩羅を食べにゆきたし羽衣のやうに揚がりし鱚を食べたし

私の故郷である大分は料理に関しては関西文化圏。それゆえ天麩羅は薄い衣で軽く揚げる。東京に来て何より驚いたのは分厚い衣をまとわせ、ごま油でこってりと揚げる天麩羅。母に食べさせたら「これは失敗じゃな」と呟いた。神楽坂の名店でのことだ。

著者略歴

川野 里子(かわの さとこ)

歌人 歌誌「かりん」編集委員

1959年大分県生まれ。千葉大学大学院修士課程修了。読売新聞西部歌壇、日本農業新聞選者など。立正大学、放送大学非常勤講師。平成20年度、21年度NHK教育放送「NHK短歌」選者。

歌集に『太陽の壺』(第13回河野愛子賞)、『王者の道』(第15回若山牧水賞)。『硝子の島』(第10回小野市詩歌文学賞)、『歓待』など。評論集に『幻想の重量―葛原妙子の戦後短歌』(第6回葛原妙子賞)、『七十年の孤独-戦後短歌からの問い』、『鑑賞 葛原妙子』(笠間書院)など 。

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 7月10日:「夜の梅」といふ羊羹わが裡になにかを憎み黒い梅咲く
  • 7月9日:濁流のなかに老母を残さずによかつた死なせてやつてよかつた
  • 7月8日:遊園地にカラーボールあまた積まれをり叫びだすがに色はしづもる
  • 7月7日:人工照明あびて咲く花ひらききりわれら盲ひて天の川なき
  • 7月6日:歩道橋のかしこに夏草生えて揺れ私はどこへ渡らむとする
  • 7月5日:蟹のやうに戯れ合ひながら見てゐたり水平線がやがて呑む船
  • 7月4日:電車には自在に風が吹き抜けて川渡りゆく線路も消えて
  • 7月3日:文法のこと友と話してをりたれど囀るやうなり文鳥が二羽
  • 7月2日:枇杷の葉は薬 隣家をはみ出して青葉闇しんとわが家にかかる
  • 7月1日:天麩羅を食べにゆきたし羽衣のやうに揚がりし鱚を食べたし

俳句結社紹介

Twitter