《七月一日》柚の花といへば時彦大人想ふ

死んだ私の母は、外から帰ってきた私に「手を洗いなさい」というのが口癖だった。本当に喧しかった。そして今回のコロナウイルス騒ぎで納得のいったこと。母があれほどうるさかったのは、大正元年生まれの彼女がちょうど八歳だった時に「スペイン風邪」が猛威を振るっていたからなのだ。だから今の子供たちが、子供を育てる年頃になると、きっと「手を洗いなさい」と、やかましく言う、頼もしい「母」になってくれることだろう。●季題=柚の花

著者略歴

本井 英(もとい・えい)

一九四五年、埼玉県生まれ。 「夏潮」主宰・「珊」同人。大磯鴫立庵 第二十三世庵主。

句集に『本井英句集』・『夏潮』・『八月』 ・『開落去来』。著書に『虚子渡仏日記 紀行』・『虚子散文の世界へ』(第三十二 回俳人協会評論賞)ほか。

夏潮HPはこちらより。 

 

 

 

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  • 7月4日:標札の消えかけてゐる花海桐
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  • 7月2日:誇らかに秀つ葉の白や半夏生
  • 7月1日:柚の花といへば時彦大人想ふ

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