《十一月九日》片脚の馬追にして枯れはじむ

洗濯物を干そうと外に出ると、驚いたように足元を小さな飛蝗が飛び立つ。
この間はリビングの床の上を堂々と蟷螂が歩いていてびっくりした。たぶん、母が庭の花を部屋に飾った時、花と一緒に入ってきたのだろう。
枯れ色の馬追は、小石川後楽園で見つけた。

著者略歴

藺草慶子(いぐさ・けいこ)

1959年東京都生まれ。大学時代、山口青邨に師事。現在「秀」「星の木」所属。句集に『鶴の邑』『野の琴』(第二十回俳人協会新人賞)『遠き木』『櫻翳』(第四回星野立子賞)がある。

 

 

 

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