《十月十三日》東京から母の弔問に袈裟用意し福島泰樹来てくれにけり

短歌の集まりに出席すると、よくたずねられるのが「どんなきっかけで短歌を始めたんですか」。私の場合ははっきりしている。大学の哲学科の同級生の福島泰樹のすすめである。その意味で彼は私の恩人である。その後もう五十年以上の付き合いだ。彼は宮崎も幾度も来ている。彼のお父さんも私の宮崎の実家を訪ねて下さったことがある。そして私の父母も福島泰樹が大好きだった。

著者略歴

伊藤一彦(いとう かずひこ)

昭和18年、宮崎市に生まれる。早稲田短歌会を経て、「心の花」に入会し、現在選者。
歌集に『海号の歌』(讀賣文学賞)、『新月の蜜』(寺山修司短歌賞)、『微笑の空』(迢空賞)、『月の夜声』(斎藤茂吉短歌文学賞)、『待ち時間』(小野市詩歌文学賞)、また歌集『土と人と星』及び評論『若山牧水―その親和力を読む』により現代短歌大賞・毎日芸術賞・日本一行詩大賞を受賞。若山牧水記念文学館館長。宮崎市に住む。

 

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バックナンバー

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  • 10月15日:朝あさを清むる人らをりにけり逃れ来て日向に果てし人のため
  • 10月14日:にぎやかにかたまりてゐる皆皆から離れてそよぐ端つこ芒
  • 10月13日:東京から母の弔問に袈裟用意し福島泰樹来てくれにけり
  • 10月12日:混濁もある人生を歌に詠めばすべてがピュア老いの短歌は
  • 10月11日:後輩の子らが短歌を詠みてゐる母校に秋蝶となりて舞ひ来よ
  • 10月10日:毎日を話し書きゐる日本語の謎ふかぶかと月夜もとほる
  • 10月9日:庭くまに驟雨をうける藤袴こころしぼらぬ秋の日のよし
  • 10月8日:過ぎし日のおのれの歌に叱られて酒を飲みをり薬呑むごとく
  • 10月7日:百ページの「大震大火紀念号」ほとんど震災記事で満たしぬ
  • 10月6日:吹く風に問難をされ立ちつくすつくつくほふしほふしつくつく
  • 10月5日:選歌とは恩返しならむかつてわれも選ばれ育てられし思へば
  • 10月4日:人生の二時間よりも濃密の「二時間」読みぬ無月も月ぞ
  • 10月3日:なりかはり歌ふ醍醐味知りにけりいにしへの人楽しみにけむ
  • 10月2日:秋の夜にひとり酌みつつ恋ふるひと幾人(いくたり)かある 筆頭は内緒
  • 10月1日:日向の国いかに見えをらむ牧水を愛し歌びとにならざりし人に

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