《十月十三日》柿剥くや父の言葉の蘇る

父は私たち娘に柿を食べさせることを嫌った。たまに剥いてくれる時は、ぶ厚く皮を剥き、へたのところや芯をごっそり除いたものをせいぜいふたかけら。食べすぎるとおなかを冷やすからら、と言っていた。幼ない時、弟が庭の柿の木に登って食べ過ぎて亡くなったのだ、と母から聞いた。いまだに柿を剥く時、父の声が聞こえてくる。柿は大好きなのだが。

著者略歴

西村 和子(にしむら・かずこ)

昭和23年 横浜生まれ。
昭和41年 「慶大俳句」に入会、清崎敏郎に師事。
昭和45年 慶応義塾大学文学部国文科卒業。
平成8年 行方克巳と「知音」創刊、代表。
句集『夏帽子』(俳人協会新人賞)『窓』『かりそめならず』『心音』(俳人協会賞)『鎮魂』『椅子ひとつ』(小野市詩歌文学賞・俳句四季大賞)。
著作『虚子の京都』(俳人協会評論賞)『添削で俳句入門』『季語で読む源氏物語』『季語で読む枕草子』『季語で読む徒然草』『俳句のすすめ 若き母たちへ』『気がつけば俳句』『NHK俳句 子どもを詠う』『自句自解ベスト100西村和子』ほか。
毎日俳壇選者。
俳人協会理事。
NHKラジオ「文芸選評」選者。

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 10月18日:鵙叫ぶ残響しかと確かめて
  • 10月17日:音読は呪術に似たり秋の雨
  • 10月16日:書を選び香をえらみて秋湿り
  • 10月15日:鯉跳ねて蓮の実飛んで日曜日
  • 10月14日:心止め足は留めずすがれ虫
  • 10月13日:柿剥くや父の言葉の蘇る
  • 10月12日:蜻蛉や今日はどこへと問ふやうに
  • 10月11日:小鳥来る撞球室の窓高く
  • 10月10日:更待や彼方の窓もまだ寝ねず
  • 10月9日:名に賞でて口切りにけり寝待月
  • 10月8日:追憶の三田仲通り居待月
  • 10月7日:獣らに立待月の影あをし
  • 10月6日:十六夜や句会ののちも卓囲み
  • 10月5日:東京の光うち延べ望の月
  • 10月4日:待宵の時満たすべき一書かな
  • 10月3日:古具屋の鉢にさしかけ秋日傘
  • 10月2日:月光に塗れて雄々しフェニックス
  • 10月1日:まつはれる蝶いつか無し萩は実に

俳句結社紹介

Twitter