《十一月十五日》分け入りにけり絵の中の冬山路

医者通いは気が滅入るものだから、ついでに寄り道をすることにしている。鍼灸院の帰りは山種美術館へ、皮膚科の帰りには根津美術館へ。近所の内科に行く時は、五島美術館へ。今日は山種美術館で川合玉堂展を見る。十代のころから造化の不思議を描いてきた画家の作品からは、渓声や風音はもとより、竹林のさざめきや、船頭の衣のはためき、山霧や時雨の音などが聞こえてくるようだ。

著者略歴

西村 和子(にしむら・かずこ)

昭和23年 横浜生まれ。
昭和41年 「慶大俳句」に入会、清崎敏郎に師事。
昭和45年 慶応義塾大学文学部国文科卒業。
平成8年 行方克巳と「知音」創刊、代表。
句集『夏帽子』(俳人協会新人賞)『窓』『かりそめならず』『心音』(俳人協会賞)『鎮魂』『椅子ひとつ』(小野市詩歌文学賞・俳句四季大賞)。
著作『虚子の京都』(俳人協会評論賞)『添削で俳句入門』『季語で読む源氏物語』『季語で読む枕草子』『季語で読む徒然草』『俳句のすすめ 若き母たちへ』『気がつけば俳句』『NHK俳句 子どもを詠う』『自句自解ベスト100西村和子』ほか。
毎日俳壇選者。
俳人協会理事。
NHKラジオ「文芸選評」選者。

 

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バックナンバー

  • 11月18日:花見小路一筋入れば冬ともし
  • 11月17日:よぎりしは姫か狐か夕まぐれ
  • 11月16日:しぐるるや小筆加へし旅仕度
  • 11月15日:分け入りにけり絵の中の冬山路
  • 11月14日:冬めくや紅茶ポットにフェルト着せ
  • 11月13日:冬霧やサモワールとは茶房の名
  • 11月12日:二杯目の紅茶落葉の香の深き
  • 11月11日:銀杏散る乗合馬車の鞭掠め
  • 11月10日:長(たけ)高くあれ武蔵野の大冬木
  • 11月9日:一木にして段染めの冬紅葉
  • 11月8日:なかぞらをきらめきわたる木の葉雨
  • 11月7日:立冬の碗の宇宙に月日星
  • 11月6日:鰯雲引きゆく地平見えてきし
  • 11月5日:鹿鳴くや茶粥の椀を置きたれば
  • 11月4日:深吉野の夜寒の宿に別れけり
  • 11月3日:露寒の前山に臥すとりけもの
  • 11月2日:地下街に飲みて語りて十三夜
  • 11月1日:朝寒の出がけのリュックひとゆすり

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