《一月六日》七草や唱哥しょうがふくめる口のうち

北枝

7日の人日に食べる七草粥のため、前夜に包丁の柄で叩いて柔らかくしておく。そのときに「七草なずな、唐土の鳥が、日本の国に、渡らぬ先に、ストトントン」などと囃し唄を歌うならわしがある。「唐土の鳥」は凶事をもたらすとされ、鳥追いの歌がもとになっているという説がある。厄払いのため、囃し唄は高らかに歌うべきものであるが、ここでは口の中でかすかに呟いているという。慎ましく、可憐な若い女性を思わせる。「唱哥」(唱歌)は、元々は雅楽の用語で、楽器の旋律や奏法を口で唱えること。囃し唄を「唱哥」といったところにも、この市井の女性に潜む床しさを感じさせる。

●季語=「七草」新年 『有磯海』所収

著者略歴

髙柳 克弘(たかやなぎ・かつひろ)

1980年 静岡県浜松市生まれ。2002年 「鷹」に入会、藤田湘子に師事。2004年 「息吹」五〇句によって俳句研究賞受賞。2005年 藤田湘子逝去。新主宰小川軽舟の下、「鷹」編集長就任。2008年 評論集『凜然たる青春』によって俳人協会評論新人賞受賞。2010年 第一句集『未踏』によって第一回田中裕明賞受賞。2017年、Eテレ「NHK俳句」選者。著書に『凜然たる青春』(富士見書房)、『芭蕉の一句』(ふらんす堂)、『未踏』(ふらんす堂)、『寒林』(ふらんす堂)、『NHK俳句 作句力をアップ 名句徹底鑑賞ドリル』(NHK出版)。読売新聞夕刊「KODOMO俳句」選者。浜松市やらまいか大使。

 

 

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