《六月十四日》入院せし六階病棟へ夕焼け

定期検診を受ける東邦大学へは、大森、蒲田を往復するバスを利用する。

やはり自分を含めた高齢者が利用する。高齢者でも凛として老いた人、疲れ果てた感じの人、で、私は。

傍目には隠しようのなく老いを感じさせる人の部類に入るのであろう。「私は、世にも老いにも負けていませんから。」と書いた札を身体にかけようと思っている。

このごろ心が折れそうになると、後藤比奈夫氏の俳句を読むことにしている。

  高上りせず美しき花火あり

氏の最新句集『あんこーる』(ふらんす堂)からである。

●季語=夕焼け

著者略歴

大牧 広(おおまき・ひろし)

1931年東京生。40代より作句を始める。「沖」入会、「沖」新人賞、「沖」賞受賞、第64回現代俳句協会賞受賞 第30回詩歌文学館賞受賞、第4回与謝蕪村賞受賞、第3回俳句四季特別賞受賞、第15回山本健吉賞受賞。句集『父寂び』『某日』『午後』『昭和一桁』『風の突堤』『冬の駅』『大森海岸』『正眼』『地平』(角川書店)。他に、『季語別大牧広句集』(ふらんす堂)『シリーズ自句自解Ⅱベスト100大牧広』(ふらんす堂)等。

現代俳句協会会員、日本ペンクラブ会員、国際俳句交流協会会員、日本文藝家協会会員。

 

 

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バックナンバー

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  • 6月17日:まどろみて車中と知りぬ老いの夏
  • 6月16日:メロンてふ儚なさ旨さ日が暮れる
  • 6月15日:籠に入れこむ郵便物や麦の秋
  • 6月14日:入院せし六階病棟へ夕焼け
  • 6月13日:薄暑てふ季語坂道のためにあり
  • 6月12日:しづけさや線香花火の珠落ちて
  • 6月11日:はればれとして遠方の祭笛
  • 6月10日:祭前車中に三度席ゆづられ
  • 6月9日:百姓の股引姿夏まぼろし
  • 6月8日:冷麦や一週ごとに齢をとる
  • 6月7日:句帳手帳くたびれてゐし薄暑なり
  • 6月6日:内戦に痩せこけた子や若葉どき
  • 6月5日:権力は守られ蟻は踏みにじられ
  • 6月4日:遠い日の淡海や新茶汲みてをり
  • 6月3日:壮年にときどきもどり肌脱す
  • 6月2日:ちひさめのビールジョッキを買ってみし
  • 6月1日:谷川の水を汲みたき薄暑なり

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