《六月十五日》五月雨やなごう預る紙づゝみ

杉風さんぷう

人から預かったままの紙包みが気になってくる。雨の降り続く五月雨の頃に、こう長く置いておくと、湿気ってしまう気がするから……という句意。「五月雨」の本意について『俳諧雅楽集』は「したゝるき心も有」と言う。「したたるし」とは、汚れて、くたくたになること。まさに、この句の「紙づゝみ」は、空気の湿気を吸って、べたべたとしてきたのだ。「五月雨」の伝統的な本意は「日数ふる・水まさる」(『連珠合璧集』)にあるから、「五月雨」から「長う」に移る言葉つづきは常識的だが、五月雨が長く降るのではなく、長く預かっている荷物へと一句が展開していくことで、読者ははっとさせられる。この巧みな〝ずらし〟が俳諧なのだ。

(『続別座敷』)●季語=五月雨(夏)

著者略歴

髙柳 克弘(たかやなぎ・かつひろ)

1980年 静岡県浜松市生まれ。2002年 「鷹」に入会、藤田湘子に師事。2004年 「息吹」五〇句によって俳句研究賞受賞。2005年 藤田湘子逝去。新主宰小川軽舟の下、「鷹」編集長就任。2008年 評論集『凜然たる青春』によって俳人協会評論新人賞受賞。2010年 第一句集『未踏』によって第一回田中裕明賞受賞。2017年、Eテレ「NHK俳句」選者。著書に『凜然たる青春』(富士見書房)、『芭蕉の一句』(ふらんす堂)、『未踏』(ふらんす堂)、『寒林』(ふらんす堂)、『NHK俳句 作句力をアップ 名句徹底鑑賞ドリル』(NHK出版)、『どれがほんと? 万太郎俳句の虚と実』(慶應義塾大学出版会)。読売新聞夕刊「KODOMO俳句」選者。浜松市やらまいか大使。

 

 

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