《七月十二日》身体という個体から茫々と広がる〈気持ち〉の雲の中にいる

「感情」と「気持ち」はどう違うだろう。「感情」のほうが「気持ち」より少し抽象的かもしれない。「気持ち」には心のうちの漠然とした空間を感じる。

著者略歴

松平 盟子(まつだいら めいこ)

歌人、歌誌「プチ★モンド」代表

愛知県生まれ。南山大学国語国文学科卒。「帆を張る父のやうに」により角川短歌賞。歌集に『プラチナ・ブルース』(河野愛子賞)『カフェの木椅子が軋むまま』『天の砂』『愛の方舟』など。著書に『母の愛 与謝野晶子の童話』『パリを抱きしめる』など。与謝野晶子のパリ滞在とその文学研究のためパリ第7大学にて在外研究(国際交流基金フェローシップ)。現代歌人協会および日本文藝家協会会員。

 

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バックナンバー

  • 7月18日:油照りの路面はしろく延びながら極熱発すサンダルの下
  • 7月17日:憂きわれを「リベル・タンゴ」の波間へと押しつつ夏はくらく深まる
  • 7月16日:炎天の真下にくるしむ人々を画面の中に置いてシャワーす
  • 7月15日:悩みもつ十七歳の日々オスカルの髪たわたわと揺れるに焦がれし
  • 7月14日:巴里祭の花火みあげし近眼の岡本かの子が愛したダミア
  • 7月13日:エアコンの冷気の真下に疲れつつ馬頭観音のごときわれなり
  • 7月12日:身体という個体から茫々と広がる〈気持ち〉の雲の中にいる
  • 7月11日:梅雨明けは今年国難のごとくして豪雨に潰えし街も橋脚も
  • 7月10日:着ぐるみのオウム信者はみな痩せて〈ゆるキャラ〉もどきの踊りしたりし
  • 7月9日:文豪に娘二人あり迂闊にも帽子のサイズを茉莉に書かせたり
  • 7月8日:軍手もて夏草を抜く朝まだき軍手の湿りは青い臭いす
  • 7月7日:日本人なお恨まれて盧溝橋渡るわれらを直視せり彼ら
  • 7月6日:妻を拒み駅舎にて逝きしトルストイその絶望を晶子は知りしや
  • 7月5日:反ユダヤ主義のドストエフスキー思うべしモスクワの熱暑ルサンチマンに似たり
  • 7月4日:モスクワの食品売り場の薄暗さ土産用キャビアかたすみにありし
  • 7月3日:熱風の逆巻く東京、災いのさなかのような七月に立つ
  • 7月2日:猛暑とは閉じたままなる暗幕に似ており人の息滞留す
  • 7月1日:夏の夜をリンゴの〈ジャズ〉は香り立つマイルス・デイヴィス偲びておれば

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