《八月十二日》あかねさす晶子の恋が拓きしもの一世紀経ても超ゆる恋なし

今から一一八年前の明治三十三年八月四日から十五日の間に、西下した与謝野鉄幹と堺の晶子は歌友を含めて何度か会い、晶子の恋心は一気にふくらんだ。「松かげにまたも相見る君とわれゑにしの神をにくしとおぼすな」。一年後の八月十五日、歌集『みだれ髪』は世に出る。

著者略歴

松平 盟子(まつだいら めいこ)

歌人、歌誌「プチ★モンド」代表

愛知県生まれ。南山大学国語国文学科卒。「帆を張る父のやうに」により角川短歌賞。歌集に『プラチナ・ブルース』(河野愛子賞)『カフェの木椅子が軋むまま』『天の砂』『愛の方舟』など。著書に『母の愛 与謝野晶子の童話』『パリを抱きしめる』など。与謝野晶子のパリ滞在とその文学研究のためパリ第7大学にて在外研究(国際交流基金フェローシップ)。現代歌人協会および日本文藝家協会会員。

 

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