俳句のページ

俳句実践講座

岸本尚毅さんが指導をされている句会を取材しています。
実践の場で俳句をどうつくるか、大変参考になると思います。

◎岸本尚輝の吟行日記1

●岸本尚毅作
老人のすぐに舌打ち秋暑し
地を打ちて音なかりけり蝶の秋
団子食ふ常磐木落葉秋の日を

作品例

空蝉の宙吊りにして日もささぬ  麻
鷭の子に池の水輪の大きこと   紀子
緑陰や目の前の木に蝉とまる  定生
鷭の子のあるかなきかの水尾なりし  紀子
ひとつだに魚のかげ見ぬ暑さかな  喜代子
この沼を覆ひて処暑の塵芥   麻
落城の跡形もなし残る蝉  紀子
パジャマ着て涼しさうなる子供かな   定生
この道の富士へと続き秋暑し   章
少し肥え少し黄ばみて栗の毬   董子
河骨の音立ててゐる秋の風   昌子
緑陰やここにぬかるみけふもあり  定生
いち早く澄みゆく水に降る葉あり   章
色変へぬ松を戸毎に祭かな   昌子
岸本尚毅氏の講評
特選
色変へぬ松を戸毎に祭かな   昌子
「祭かな」とありますが、この句の場合、「色変へぬ松」が季題としては優先されます。「祭」は「秋祭」だという解釈になると思います。この「戸毎に松ある」というのは秋祭りにふさわしい町並みなんだと思うんですね。「夏の祭」というと、下町とか店があったりするようなところなんですが、この句の「秋祭」場合、「在」の感じがよく出ています。

特選
◎ はじめから椅子にくぼみや柳散る   麻
椅子が古くなって、すわるところが最初からくぼみがある。むかしは良い椅子だったのに、というようなことが想像されて、「柳散る」がちょっとつかずはなれずでいいんじゃないですか。

他に、

○ 空蝉の宙吊りにして日もささぬ   麻
よく見ているなと思いました。空蝉が宙づりになる状態というのは、蜘蛛の糸にでもひっかかっているのかな、と勝手に思ったのですが、そうでなくても爪1本でひっかかっているという状態でもよくて、「日もささぬ」というのが、ある程度枝が込み入って葉が茂ったようなところにあることが想像されて、空蝉の状態がきわやかに見えてくるのではないでしょうか。

○ 生れし蝦澄む水よりも透きとほり   -
「澄む水よりも透きとほり」より「澄む水にして透きとほり」の方がいいのでは。「AよりもB」という比較は句が理屈っぽくなりますので,「澄む水の中に」ということで「澄む水にして」ではどうでしょう。

○ この沼を覆ひて処暑の塵芥   麻
「覆ひて」ではなく「覆へる」として、なるべく「て」は使わないようにした方がいいですね。



(おことわり)
  このページは、俳句愛好者の作句の勉強の一助とする目的で、岸本尚毅さんが句友諸氏と個人的に行っている句会の様子を紹介させて頂くものです。この句会は私的な会であり、部外者には一切オープンにされておりません。そのため日付・場所・作者名は非公開です。お問い合わせはご遠慮ください。引用された作品の著作権は、実在する各作品の作者に帰属しますのでご注意ください。
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