●岸本尚毅作
冬木より人老い易し歩み去る
日面に花古びたる椿かな
盛り上がる向うは見えず芝枯るる
うちすすむ寒鯉の目は横にあり
寒鯉の南へ泳ぐめでたさよ
梅よりも椿に寒き風の音
虫を喰ふ仕掛をそこに室の花
日の光室の一花を逸れにけり
雲失せて月の待たるる木の芽かな
●岸本尚毅特選
湯たんぽのほかは求めぬこころかな 昌子
手をおけば氷のごとく寒牡丹 喜代子
梅さぐる土竜の国をその下に 喜代子
噛む音の楽しき冬のサラダかな 章
捨てられぬ父の碁盤と湯婆と みお
花小さく雄蕊の長く寒に入る 昌子
森深く短日の池深みどり 昌子
ソーダ水はじけるやうに霰かな とも
青空は西より来たり寒の入り 喜代子
尚毅選
探梅のついで詣の墓一つ 八江
胸張つてまつすぐゆける息白し 昌子
戸を引けば蠅の出て行く三日かな 章
寒鯉も泥の落葉もじつとして 紀子 |