ときどきぼくは小声できみに話しかける
きみの眼の陰で眠る小鳥をおびえさせるといけないから
欲望のきれいな白い鳥
その羽根のいちばん長いのをぼくは書くために盗んだ

フランスの詩人J=M. モルポワが30歳になったばかりのときの詩。こんな美しい愛の詩を書いていた彼も今年54歳、学究肌のソルボンヌの先生で、フランス詩壇のリーダーのひとりです。
ところであなたは、愛する人にどんなふうに愛をささやきますか。モルポワは自分の欲望が相手の女性の眼の中に眠っている(彼女の欲望の)小鳥をおびえさせないように、まずは小鳥の羽根を1本ひそかに抜き取って、それで彼女を目覚めさせる手紙を書くんだというのです。どうでしょう、このやさしい気遣いは! 愛を共有するためには、心をこめて相手を配慮する必要があるんです。そっと彼女の眼をのぞきこんで、眼が覚めた? と聞いてあげてください。もちろん女性のほうから男性にでもOKです。
この詩には、難しい言葉は使われていなくて、見慣れない言葉といえば、2行目のeffaroucher(おじけづかせる)ぐらいです。4行目のさいごの言葉plumeは鳥の羽根とペンの両方の意味があり、それを上手に使っているところは、さすが人気の抒情詩人の腕前ですね。
(詩の引用は『対訳フランス現代詩アンソロジー』(2001、思潮社)による。)
|