激しく はずみが
必要だった
おどおどした
さいしょの結びつき
きみのほほの上の血統のおきて
ひっくり返った丸椅子と
ぼくたちのくちびるの間にこびりついた髪の毛
にかまわず
きみの舌をおおう
うろこ
を引っ剥がすためには

清岡卓行『ひさしぶりのバッハ』
(2006年思潮社刊)より
フランス文は詩集のなかで引用されているアルフォンス・アレーの詩
モルポワより一世代若いレジーヌ・ドゥタンベル(1963年生れ)は、作家としての地位を確立した後で数冊の詩集を発表しました。第1詩集は『イコン』で、36歳でのデビューです。動物の交尾により近いと言えそうな、小鳥も何も、象徴は不要の、シンプルで切迫した愛の始まり。背景としてあるのは、ひっくり返った椅子と二人の唇の重なりに割り込む唾で濡れた彼女の髪の毛ひとすじ。「キスすることはきみのうろこをひきはがすこと」というフレーズのラディカルさ。「わたしは憎しみと反感、さめた愛情のテクストがむしろ好きだったことに気が付いている。わたしは愛の終わりが好きなのだ」と、この詩集のあとがきで早くも宣言するほど、愛の自立の(ドゥタンベルが女性であるだけになおさら)試練としての様相を示しています。
(詩の引用は『詩学』2007年7月号による)
|