麗しき恋人よ、
わたしがいないとあなたはいない
あなたがいないとわたしはいない
Bele amie, si est de nos:
Ne vos sanz moi, ne moi sans vos
Bele amie, si est de nos:
Ne vos sanz moi, ne moi sans vos!
東京の都心部からおよそ1時間、多摩丘陵のはずれの住宅地に引越してきて、私はそろそろ40年になろうとしています。駅へ出る道沿いはおおかた住宅で埋まりましたが、まれに雑木林のまま残された空地があって、5月末ごろ、ふと、いい匂いがします。足を止めて草むらを覗き込んで、匂いの源を探せば…すいかずらです。すいかずらの株を引き抜いてきて家のフェンスに植えておいたのが、花が咲きました。驚いたのは、春の始めから、たくさんの蔓がぐんぐん伸びて、フェンスに絡まりだしました。見ていると、その這い方の猛烈さ。ああ、やはり野生の草なのだと思いました。
中世の女性詩人マリ・ド・フランスは12のレー物語詩を残しています。「すいかずら」はトリスタン伝説を材料に作られた悲恋物語ですが、恋人たちが死んだあと、墓に生えたすいかずらが相手の墓へ蔓を伸ばしていく、と歌っています。死を超えた永遠の愛に心が潤いましたが、たまたますいかずらを植えてみて、人の情念の執拗さがすこし怖くなってきました。
恋愛って憧れるほどのものなのだろうか?「恋に落ちる」という言葉のとおり、人生の本道からはずれたものではないだろうか?
でも、人の世に恋愛がなければ、詩や歌はないでしょう。男と女の間には昔から、命がけで求め合う激情が流れているのかもしれません。
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