栗毛よ 葦毛よ 波をわたって行ったおまえたちよ
おまえたちにまたがる余地がまだわたしに見つかるだろうか
…
栗毛よ 葦毛よ 大気をわたって行ったおまえたちよ
われらをつなぐ手綱は秘密の血管だった

ジャン=バチスト・パラ詩集『 男像柱』より「火の馬」抄
『対訳フランス現代詩アンソロジー』思潮社2001年刊
現在、月刊文芸誌『ウロープ』の編集長をつとめるパラは1956年生れです。現在若干50才の気鋭のフランス現代詩のリーダーの個性を一言で言えば、「イタリアとロシアの魂の調和」です。アポロン的な均整の取れた知性と情熱、それにスラブ世界の民族性が混合すれば、パラの詩的精神的宇宙の輪郭が浮かび上がるでしょう。パラは父の子であるという意識が強く、それが自立的な総合力の源になっているように見えます。最近、パラはヨーロッパ人である、と私は感じるようになりました。頼もしい精神の具現者であり、構成力のある、情熱的な作品を生み出し続け、現代詩の進むべき方向にきわめて意識的な新しい詩人像を形成しつつあります。
パラのラブレターは、愛馬への呼びかけです。馬と乗り手との一体感を歌って、大理石の彫像の前に立つようなダイナミックな気分を創り出しています。パラが跨る愛馬、その姿は、栗毛、葦毛の二頭立てで天球を馳せるアポロンを想像させます。サヴィニオやズバルバロら、20世紀の内省的なイタリア詩人・作家たちの翻訳者でもあり、強い忍耐力に支えられながら、自我の小宇宙に滞まることはないのです。
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