ことづて
彼女は腹の上に絹のリボンを結んでいた
それでぼくは彼女のからだの約束が分かった

Marc Kober
マルク・コベールは1964年ニース生まれ。現在アンジェ大学でフランス文学を教えていますが、生涯の研究テーマはエジプトのコプト人作家ジョルジュ・エナです。コベールは1993年から6年間日本に滞在して、大阪大学、名古屋大学で教鞭をとるかたわら、精力的に日本文化、朝鮮文化の吸収に努めました。2月の一番寒い時期にこれから佐渡に渡るというコベールに驚きもし、感心もしたことがあります。見かけは、ほっそりした顔立ちの見るからに育ちのよい坊ちゃんですが、彼の内部には何か意識の激しさがあるように感じられます。それは一言で言えば、「詩への情熱」でしょうか。彼の異文化への偏見の無さはそこから来るのかもしれません。偏見がないといっても、異文化への違和感を激しくしつこく感じながらのもので、意識を跋渉しつくすような彼の詩には違和感と探究心との間で揺れ動くエネルギーが燃えているのがわかります。 愛に関しても、かなりの肉感派で、彼の書いたものから推測すれば、日本滞在中も日本女性の恋人の存在があったようです。アジアからの帰国後フランスの知的な女性と結婚していますが、今回このページのために送ってくれた上掲の2行詩も、結婚にいたったその恋人へのラブレターのようにみえます。
ただ、詩人コベールの視線は同国人の愛妻との偕老同穴にとどまってはいません。もうひとつ、故郷ニースに近い町ロデーヴを歌った愛の詩を読むと、そのことがよくわかります。
「ロデーヴにて」
ロデーヴには
セーヌ河畔のセイレンほどには
美人のセイレンの像はないけれど
その声の音楽的なフィナーレに
乳房のあいだのよい匂いに
ぼくは憧れたのだろうか?
回遊式の遊歩道には
おおぜいのアラブやジプシーの娘たち
星空の下では
アポリネールのスラヴの声さえ聞こえる
そして葉群れの間には
猫たちの目が光る
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