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有働薫の詩人のラブレター

◎詩人のラブレター14

病気の白い
湯気のページの上で半分はだかのきみ
風から息を汲み
眼からどんなささいな事をも汲み上げるきみ
たった一つの夢の源だったきみに
枯れた花で作ったこの花束をあげる



J=M.Maulpoix 『対訳フランス現代詩アンソロジー』(2001、思潮社)より


  ふたたびモルポワです。他の詩人たちの手紙に気をとられているあいだに、モルポワ氏の愛も、様変わりがしました。彼の先妻、エリザベートには1回だけ会ったことがあります。金髪で青い目、すらりとして、絵に描いたような美人でした。でも、まったくの私見ですが、精神は?…外国でよく、本能的とでも言いたいような、不審に満ちたまなざしに出会うことがありますが、彼女はまさしくそういう視線の人でした。異人種に対して静を保てない、だから、相手を人間扱いできず尊大な態度に頼る。私の分類学に、こんなにも直ぐに分類作業が完了したのも珍しいことでした。聞けば、大学時代の同級生とか。美男美女カップルで、かたち的には理想形だったのでしょうが。
この、別れの詩には、哀しさと同時にひとはけの皮肉さがあるように感じます。恋人に花束をあげて去るのですが、それは乾いた花、以前には香り高く匂っていたかもしれない過去の花束なのです。
 昨年7月14日に、年若い再婚の新妻ロールとの間に長男ルイが生まれました。
 フランス人たちは、人生はいくどでもやり直しがきくのだと、再挑戦することを受け入れる社会をつくっています。フランス老いたりとはいえ、やはり人間的には先輩の国だろうと思います。硫黄島玉砕で3ヶ月もの間投降を拒んだ壕内の日本兵たちを、理解しがたい、とアメリカ兵が回想しています。投降をさせずに、地獄以上の苦しみを舐めさせたのは、兵士たちにやり直しの人生を与えなかったのは、敵のアメリカ兵ではなく、味方の上官だったことが徐々に明らかになってきています。
 あの悲惨な敗戦は、ひとりひとりの人間に対する尊敬の念に欠けていた指導層の意識に問題ありということではないでしょうか。 詩は、人間の意識を書く。長い間詩に携わってきて、最近私はこう思うようになってきています。


有働 薫(うどう・かおる)
1939年東京杉並生れ。第1詩集『冬の集積』(詩学社)、第2詩集『ウラン体操』(ふらんす堂)ほか。 モルポワ訳詩集は、『夢みる詩人の手のひらのなかで』(ふらんす堂)、『エモンド』(ふらんす堂)、『青の物語』(思潮社)。
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