What are they looking for,
Running to the summit of lost time?
Hundreds of people vaporized instantly
Are walking in mid-air.
“We didn’t die.”
“We skipped over death in a flash and became spirits.”
“Give us a real, human death.”
失われた時の頂きにかけのぼって
何を見ようというのか
一瞬に透明な気体になつて消えた数百人の人間が空中を歩いている
(死はぼくたちに来なかつた)
(一気に死を飛び越えて魂になつた)
(われわれにもういちど人間のほんとうの死を与えよ)
嵯峨信之「ヒロシマ神話」 詩集『愛と死の数え唄』(1957)より
SAGA Nobuyuki ≪The Myth of Hirosima≫, Translated by KIJIMA Hajime
広島の原爆投下をテーマにした嵯峨さんの「ヒロシマ神話」の前半部分です。木島始さんの英訳を添えました。わずか12行の詩ですが、日本の現代詩が世界にさしだす重要なラブレターです。詩の後半は銀行の入り口の石段に焼きつけられたひとりの犠牲者の(人がたの)影が、ここで何を待たねばならないのかと問いかける内容になっています。
広島と長崎が人類最初の原爆投下の犠牲になってから今年62年目ですが、まだわたしたちはこの人影の問いかけに答えることができません。また何時、つき抜けるような夏空の果てから不気味な轟音が接近してくるか分からない不安を抜け出せないでいます。ヨーロッパでは次に原爆の犠牲になるのではないかとの恐れから、「ユーロシマ」という言葉さえ生れているということです。
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