幾千年かけても足りないだろう
ほんの1秒の永遠を語るのに
その瞬間にきみがぼくにキスをしたのだ
その瞬間にぼくがきみにキスをした
ある朝冬の光の中で
パリのモンスリ公園で
パリだよ
地球の
一つの星の地球の上でだよ


ジョセフ・コスマ作曲のシャンソン「枯葉」や「バルバラ」で高名なパリっ子詩人プレヴェール。コスマと生み出したシャンソンは50曲にものぼります。また弟のピエールと組んで映画会社を作り、「霧の波止場」「悪魔が夜来る」「天上桟敷の人々」など、監督マルセル・カルネ、脚本プレヴェールでぞくぞく名作を発表しました。戦後の日本で「フランスの香り」といわれたプレヴェール=カルネの映画は、吟遊詩人の恋をテーマにした「悪魔が夜来る」の圧倒的な美しさに代表されるごとく、わたくしたちの戦後美意識再生の糧でした。わたくしは、太平洋戦争末期に書かれ、戦後になって上演された加藤道夫の戯曲「なよたけ」にプレヴェールとの強い近親性を感じます。
プレヴェールの詩のほうは、フランスで驚異的なブレークをしたほどには日本では消化しきれなかったようです。新井満のような人のフィルターをかければ日本でもこれからブレークするのかもしれません。プレヴェール映画のあの天国的な映像美と、庶民の日常の肌感覚が一人の人の中に同時にあることを呑み込むのはなかなか容易ではないのです。上の詩のように一瞬と幾千年を同時に含むプレヴェールの詩を読むのは、とても単純であると同時に、強靭な積極性を求められている感じもするのです。
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