やがて地球は
夜昼の区別もなしに廻る
盲いた空間にすぎなくなるだろう。
アンデス山脈の巨大な空の下には、
山も見えず、
小さな窪地一つなくなるだろう。


ジュール・シュペルヴィエルから後世の人々への恐ろしいラブレターです。われわれ人類の生命の基礎である地球が「やがて」どんな状態になるのか、シュペルヴィエルにははっきり見えています。詩人とは予感する人ですから。
上掲の第1連に続いて、第2連は「世界中の全ての家から、残るものは/ただ一つのバルコンだけだろう。/人間の世界地図から残るのは/天井のない一つの悲しみだけだろう。」第3連「大西洋は火と燃えて、/風の中の塩からい一滴の味と、/海のことはすっかり忘れた/魔法の飛魚一匹だけになるだろう。」第4連「1905年型の自動車では/(車輪は4つもあっても、道がない!)/当時の三人の娘が/気体になって残って、/パリも遠くないと思いながら、/窓から景色をみているだろう。/そして、喉をしめつける/空の匂いしか嗅げないだろう。」そして最終の第5連では「森の広場では、/一羽の鳥の歌が立ち昇るが、/誰もそこをどことも言えず、/好きだとも言えず、聞えもしないだろう。/それを聞いて、「ひわだな」とつぶやく/神様以外には。」と予言されています。
シュペルヴィエルは南アメリカ ウルグアイの首都モンテヴィデオの銀行家に生まれ、76歳の生涯をパリとモンテヴィデオで暮しました。祖先はフランス バスク地方の出身で、ちょうどシュルレアリスム全盛のパリで作家活動をしながらグループに組せず、孤立した詩人でした。それこその予感の力であると思われます。この地球破滅のイマージュはこれ1篇ではなく、初期の作品のあちこちに姿を変えて現れています。「海のうえの、/雲のさなかに、/女の顔が/空をみている。/そして鳥と魚の合いの子が、/岸辺を行ったり来たりして、/泡を雲に運んでいる。」は「大空」と題する詩の1部ですが、現在の定まった風景は残酷に覆され、あり得ない戦慄的な風景が幻視されています。
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