アナタが大きな花束を 持ってきてくれたの
たぶんそれはマーガレット
ラベンダーの色した青いのと
ばら色がかったうすむらさき
どれもアナタの母様の 庭から摘んできた花々
私はそれを書斎に飾った
夢の中 私は小暗い部屋にいた


マリ・エチエンヌは1938年生れで、子供時代をベトナムそしてアフリカで過ごしたためか、彼女の詩的世界には異邦の翳りに加えて、女性的な繊細さと不定形な雰囲気があります。このあたりの事情を、文学博士アンヌ・ストリューヴは次のように分析しています。「マリ・エチエンヌの世界は、異なる場所や異なる風景への嗜好を特徴としている。…とはいえ、彼女にとって重要なのは常に内面であり、それは夢と現実の間、意識と無意識の世界の境界で見出されるものである。彼女の詩の言葉は多く、取り憑かれた存在によって発せられていることに注目すべきである。」1997年度マラルメ賞を受けた詩集『アナトリア』の冒頭には「現実は想像される」とのフレーズが掲げられ、現実と想像力とを壁のようなもので仕切ってしまわない融通無碍な世界としての詩を主張しています。上掲の7行は「M.R.への手紙」と題する代表作の1つの冒頭ですが、平常の情景のように見えて、たちまち無意識の世界になだれ込んで行きます。朝方の夢でうなされているようなめくるめきに連れ込まれるのです。このような世界の構築は、彼女が長年演劇の世界に身を置いていたことにもよるのではないでしょうか。あるテーマを提示し、その周りをぐるぐる回りながら変奏をくり返していくドラマ性が彼女の詩の大きな魅力です。2000年秋には夫君の詩人ポール・ルイ・ロッシ氏と共に来日し、京都と東京で講演会や詩人との交流朗読会を持ちました。
代表作の長詩「アナトリア」の日本語訳は「現代詩手帖」2001年6月号に有働訳で読むことができます。
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